ステレオ写真の基本

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ステレオ写真の基本

  このコーナでは、ステレオ写真(立体写真)制作の基本ポイントを説明します。これからステレオ写真を始めようと思っている方や、上手く制作できなくて悩んでいる方の参考になれば幸いです。

ステレオ写真の要素


ステレオ写真制作のポイントを下の5つの要素に分けて説明します

2台のカメラの間隔(ステレオベース)

2台のカメラの向き(平行撮影とトーイン撮影)

2台のカメラの同期

ステレオウインドウの調整(トリミング)

鑑賞方法


2台のカメラの間隔(ステレオベース)

 通常私たちは、65mm程度離れた2つの目によって世界を見ることにより、物を立体的に把握しています。左右の目の見え方の微妙な違いを、脳が瞬間的に判断し、物を立体的に見ているわけです。その両眼に入ってくる映像を2台のカメラで撮影し、撮影後の画像を再び両眼で見ることにより、立体感を再現しようという術がステレオ写真というわけです。

 そのためステレオ写真では、両眼に匹敵する2台のカメラを用いて撮影するわけですが、この2台のカメラのレンズ間隔のことをステレオベースといい、撮影されるステレオ写真の立体感と大きく関係します。ステレオベースを目の幅と同様な65mmに設定することで、目で見た感じに近い立体感のステレオ写真を撮影することができます。

 しかし、広大な風景を65mm のステレオベースで撮影しても、ほとんど立体感を感じることはできません。また、逆にものすごく小さな昆虫などは、ステレオベースを小さく設定しないと、立体感が強すぎて鑑賞することができません。極端な場合、片方のカメラにしか被写体が写っていないというケースも考えられます。
 私の場合、見た目に近い立体感が必要なときは、ステレオベースを人間の目幅と同じ65mm に設定し、それ以外の特殊な場合(遠い風景や建物、小さな昆虫や花)では、ステレオベースを計算で求めて、最適な立体感を得るようにしています。

図.1 は、ステレオベースと、撮影可能範囲をあらわしています。

図1.ステレオベース
図.1 ステレオベースと撮影可能範囲


下に示すステレオベース計算式は、適切な立体感を得るためのステレオベースを計算するものです。これは、撮影可能範囲(Lmin〜Lmax)の空間を、見やすいステレオ写真として表現するための基本式となります。

ステレオベースを Sb とすると、

Sb = k × ( Lmax × Lmin ) ÷ ( Lmax - Lmin ) ÷ f  (単位:mm)

Lmin : 最も近い被写体までの距離 (mm)
Lmax: 最も遠い被写体までの距離 (mm)
f : 撮影レンズの焦点距離 (mm)
k : フィルム上での視差 (mm)

なお、背景が風景などの場合は、Lmax はほぼ無限大(∞)となり、次式のように簡略化できます。
Sb = k × Lmin ÷ f  (単位:mm)

k は、35mm フィルムを使う場合、1.2mm 程度が適当といわれています。これは、35mmフィルム上で1.2mmの視差という意味で、一般的にだれもが鑑賞しやすい視差として設定されています。ただし、鑑賞方法や立体感の好みにより多少変更される場合があります。この値を大きく設定すると立体感が強くなり、小さく設定すると立体感が弱くなります。

また、Lmin 〜 Lmax の空間を視差k の範囲内で撮影しますので、このLmin 〜 Lmax の空間範囲が広いと、それぞれ個別の被写体(手前の花とか)に与えられる空間は少なくなり、カキワリ状態のステレオ写真となります。逆にLmin 〜 Lmax の空間範囲が狭いと、その範囲だけを視差k の範囲内で撮影しますので、個別被写体に与えられる空間は大きくなります。これは、例えば花などを撮影する場合、バックには何も写さず、花の手前から奥までを Lmin 〜 Lmax に設定することで、違和感なく花に立体感をもたすことが出来るということです。

 既成のステレオカメラ(ステレオリアリストや、コダックステレオなど)で撮影する場合には、ステレオベースは目幅(65mm 〜70mm程度)に固定されていますので、逆に立体感を表現できる被写体の距離が限定されます。レンズの焦点距離を35mm、最遠被写体までの距離を∞として、最近被写体までの距離を上の式を使って逆算すると、

Lmin = Sb × f ÷ k = 65 × 35 ÷ 1.2 = 1895(mm)

となり、約2m〜∞ までの空間をフィルム上の視差(k) 1.2mm の範囲で再現できることになります。


2台のカメラの向き(平行撮影とトーイン撮影)

 ステレオ撮影における2台のカメラの向きは、鑑賞時の見やすさに影響を与えます。考えられるカメラの向きは図.2のように、平行撮影か、カメラを被写体方向に内側に向けたトーイン撮影(コンバージェンス撮影ともいう)ですが、理想的な撮影は平行撮影です。

図2.平行撮影とトーイン撮影
図.2 平行撮影とトーイン撮影

トーイン撮影では、撮影される左右の画像に 図.3 のような台形歪みが発生します。この台形歪みが大きくなると、左右画像の斜線部分に異なるものが写るため、鑑賞時にその部分がちらついたり、画面両端において上下ズレが発生します。 また、立体感が狂う障害(中央部が飛出し、両端が引っ込むなど)も発生するため、見難い立体画像になる場合があります。

図3.トーイン撮影における台形歪み
図.3 トーイン撮影における台形歪み

しかし、望遠撮影や、マクロ撮影においては、レンズの選択によって、トーイン撮影をしないと被写体全体が左右両カメラに写らないという状況になる場合があります。 この場合にも、できるだけトーイン角を少なくして、平行撮影に近い状態で撮影するとよいでしょう。
なお、平行撮影では、左右の写りはフィルム上のどちらかに偏ることになりますが、あまり気にする必要はありません。後で説明するステレオウインドウの調整(トリミング)によって解消します。


2台のカメラの同期

 ステレオ撮影において、動いている被写体を撮影する場合には、左右のカメラのシャッターを同時に切る必要があります。既成のステレオカメラでは、この点はすでに考慮されていますので気にする必要はありませんが、2台のカメラを使って撮影する場合には、何らかの方法で2台のシャッタータイミングを同期する必要があります。

 カメラに、電気的にシャッターを切ることができるターミナルがある場合は比較的簡単で、電気スイッチにより同時にシャッター信号を両カメラに入力すれば、多くのカメラにおいて同時にシャッターが切られます。(カメラの機種によって信号入力の方法が異なるので注意が必要です)
また、この場合もAFやAEはOFFにして、極力マニュアルで撮影します。その理由は、AFやAE機能を働かせると、左右のカメラでその動作時間が異なり、最終的にシャッターが切られるタイミングがずれるからです。 (AF・AEは左右で異なる状態になる可能性が高く、ステレオ撮影ではOFFにするのが原則です)

 最近は、デジタルカメラが普及しましたが、デジタルカメラはシャッターボタンが押されてから、実際にシャッターが切られるまで、内部でさまざまな処理がされる機種が多く、完全に2台を同期させるのが難しいものです。できるだけマニュアル機能が付いた機種を選択し、また同時にシャッターを切るために、外部リモート端子があるものを選択するといいでしょう。(外部リモート端子を使った接続は、機種により異なります) また赤外線を使ったリモコンが使える機種では、リモコンから発せられる赤外線を2台のカメラの受光部にあてることにより、簡易的に同時シャッターを切ることが可能です。 受光部がはなれている機種や、屋外でも正常動作させるには、光ファイバーなどを用いてリモコンから受光部まで赤外線を導くのも効果があります。


ステレオウインドウの調整(トリミング)

 ステレオ撮影された左右の写真は、通常トリミングすることで、より見やすく、安定した立体定位を得ることができます。立体定位というのは、被写体が画面から引っ込んで見えるか、飛び出して見えるかという、鑑賞時の被写体位置です。 また、マウント枠平面上のことを、窓ガラスになぞえて「ステレオウインドウ」と呼びます。(図.4 参照)

図4.ステレオウインドウ
図.4 ステレオウインドウ

左右フィルム上の同一箇所に写っている被写体は、鑑賞時にマウント枠(周囲の枠)と同一平面上に定位します。それより近くの被写体はマウント枠より飛び出して見えます。また、それより遠くの被写体はマウント枠より引っ込んで見えます。 このとき、図.5 のようにマウント枠より外側にハミ出す画像で、かつマウント枠(ステレオウインドウ)より飛び出す画像があると、その部分でチラツキを発生し、立体定位感が不安定になります。(目の疲れや頭痛の原因にもなります) この状態をステレオウインドウが壊れていると表現します。 また、マウント枠に接していない画像は、飛び出していても問題になることはありません。

図5.飛び出す画像に注意
図.5 飛び出す画像に注意

以上のことを踏まえて、左右のフィルムを適切にトリミングすることで、見やすいステレオ写真を作りこむわけです。

専用ステレオマウント(図.6 )では、フィルム窓がフィルム最大幅より小さくできており、左右のフィルムを横方向にスライドすることにより、このトリミング作業が簡単に行えるように作られています。左右のフィルムを互いに近づく方向に横スライドさせると、立体像が飛び出してきます。また逆に、左右のフィルムを互いに遠ざける方向に横スライドさせると、立体像が引込んでいきます。 実際には、左右のフィルムをステレオマウントにセットし、平行法やビューアで鑑賞しながら、左右のフィルムを横方向にスライドさせ、立体定位を調整します。このとき立体像が先に説明したステレオウインドウを壊さないように注意します。

図6.ステレオマウントでの定位調整
図.6 ステレオマウントでの定位調整

 デジタル画像の場合も同様で、Photoshopなどの画像編集ソフトにて、立体像がステレオウィンドウを壊さない様に、画像の左右を適切にトリミングする必要があります。簡単な方法としては、「アナグリフメーカ」などのステレオ画像用ソフトに左右画像を読込み、赤青メガネを利用して立体感を確認しながらトリミング量を調整し、最終的に調整された左右画像を保存する方法などがあります。


鑑賞方法

 ステレオ写真の鑑賞方法には下に示すような色々な方法が有ります。基本的には、ステレオ写真の左側の写真を左目で、右側の写真を右目で見ることができれば、脳の中で立体像が再構成されることになります。
下の方法以外にも様々な鑑賞方法が考えられていますので、そのあたりは調べてみると面白いと思います。

ステレオマウント(フィルム)を、ステレオビューアで直接鑑賞する。

平行法や交差法で画像をプリントし、裸眼立体視や、専用ビューアで鑑賞する。

赤青方式の立体画像(アナグリフ)に加工し、赤青メガネで鑑賞する。

3D用プロジェクターによりスクリーンに投影し、偏光メガネなどで鑑賞する。

TV画面に表示し、専用シャッターメガネなどで鑑賞する。

3D液晶に表示し鑑賞する。



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